【教育経済学が証明】働く母親と専業主婦、子どもの学力に差はない?親の時間投資の新事実

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共働き世帯が増える現代、多くの親が「子どもと接する時間が足りない」「専業主婦の方が子どもの教育に有利なのでは?」と不安を抱いています。特に「東大に合格する子の母親は専業主婦が多い」といった話を耳にすると、働く親としてはますます心配になるものです。

しかし、慶應義塾大学総合政策学部教授で教育経済学の専門家である中室牧子教授(著書『学力の経済学』37万部突破)の研究によると、私たちの常識を覆す意外な事実が明らかになっています。

教育経済学とは何か?科学的根拠に基づく子育て

教育経済学とは、経済学の手法を用いて教育の効果を科学的に分析する学問です。一言で言うと「インセンティブを研究する学問」であり、人々がどういう状況であればより勉強したくなるのか、子どもが自ら勉強してくれるような動機付けや制度を見つけ出します。

従来の子育て論は経験則や感覚に頼ることが多かったのですが、教育経済学では大規模なデータを用いて、本当に効果のある教育方法を科学的に解明しています。例えば、毎晩子どもの隣について勉強を見続けるのは親にとってしんどいことですが、子どもが一人でも勉強してくれるようなロジックがあれば、親としては素晴らしいことです。

この分野では、親が子どもに使う時間を「時間投資」という重要な教育投資の一つとして捉えています。お金をかける塾や習い事が教育投資であることは誰もが理解できますが、実は親の時間も同様に価値ある投資なのです。

生活時間調査が明かす親の実態

研究では「生活時間調査」という、家計簿の時間版のようなデータを使用します。家計簿で教育費の支出が分かるのと同じように、時間についてもどういう風に時間を使ったかを記録したダイアリーです。これは日本だけでなく世界各国で実施されており、どの活動にどれくらい時間を使ったかを詳細に記録しています。

このデータを分析することで、代表性のある大規模サンプルから、親の時間投資の実態を客観的に把握できるのです。そして、この生活時間調査を見てみると、国によらずある共通のパターンがあることが分かっています。

【研究結果1】学歴の方が働き方より大きく影響する

最も注目すべき研究結果は、親の働き方(専業主婦かフルタイム勤務か)よりも、親の学歴の方が子育て時間に大きく影響しているという事実です。

海外データから見えた真実

高学歴な親ほど子育てに時間をかけているという結果が出ています。高卒に比べると大卒の親の方が、子どもの教育にかける時間が長く、勉強にかける時間も長いということが一目瞭然で明らかになっています。実は学歴の方が働き方よりも大きな影響を与えているのです。

一方で意外なことに、親の働き方については、仕事をしているか専業主婦かというところは子育てにかける時間にあまり大きな差がないという結果になっています。勉強への時間投資について働き方の差を見ると、一番右がフルタイムで一番左が専業主婦ですが、ほとんど差がないのです。

なぜ働き方の差が小さいのか?

これは論理的に考えれば理解できます。子どもが小学校に入ったという風に考えてみると、子どもが小学校に行っている時間は親が働いている時間とかぶっています。そういう風に考えると、そこまでその専業主婦かどうかということで子どもと接する時間に大きな差が生じるわけではないのです。

様々な体験活動についても同様です。親と一緒にスポーツをする、料理をする、キャンプに行くといった様々な体験をしますが、これも意外なことに、そこまでその働き方による差は出ていません。多くは土日の活動だからです。

日本の特殊事情

ただし日本の母親に関しては、海外の母親と比べるとやっぱり専業主婦の母親の方が時間投資が長いという結果になっています。学歴で差がついているのは間違いなく、やっぱり勉強への時間投資も、実は日本は体験への時間投資も学歴が高い方が長くなる傾向があります。

しかし、これを分で見ると横軸の単位は分で、1日分あたりということなので、43分ぐらいと30分ぐらいで10分程度の差でしかありません。それはそうだと思います。家に帰ってから勉強する時間は6時間も7時間もあるわけではありませんから、子どもが勉強する時間の10分ないし15分ぐらいの時間に差がつくかどうかというそういうことになるわけです。

ですから実は働き方の問題がそこまで大きな影響を与えることはないのではないかということが分かります。

【研究結果2】父親の時間投資は意外なパターン

父親の時間投資についても興味深い結果が出ています。最近は父親も子育てに関わるようになってきたことで、父親のデータも取られるようになってきました。

母親vs父親の投資パターンの違い

お父さんの時間投資は横棒1本になっており、お母さんの時間投資は子どもの学齢とともに下がってくるのに対し、お父さんに関してはあんまり子どもの学齢の差がないということです。14歳になって効果が出てくるというか時間効果が出てくるわけで、お母さんを追い越しちゃうという部分があります。

実はお父さんのその時間投資の効果は子どもの学齢とあんまり関係がないということがあります。やっぱり子どもの学齢が小さい頃はママママになりますが、思春期以降では父親の役割がより重要になってくることが分かります。

【研究結果3】習い事の効果:先取り学習の落とし穴

多くの親が関心を持つ習い事について、教育経済学は明確な答えを提供しています。幼少期の投資に関しては基本的に投資効果が高いという研究が多いのですが、ただこれまでの研究で分かっていることで言うと、その習い事の中身が重要になります。

先取り学習は効果が薄い

就学前幼児期という観点で言えば、皆さん結構読み書きや文字を書く読むみたいなことを先取り学習的にやりたいという風に考える人が多いのではないでしょうか。ただ最近の研究もそうですし海外の研究もそうですが、それはあまり効果がないという結論になっている研究の方が多いです。

読み書き算数的なことを就学前に一生懸命やったとしても、就学後にほとんど追いつかれているという結果になっています。やっぱり年齢に応じた学び、年齢に応じた刺激が必要なのです。

年齢に応じた発達の重要性

幼児期の子どもたちは小学校の子どもたちと違って、じっと座って先生の話を聞いて、それを咀嚼して紙に書くということができる年齢ではありません。できないその発達段階にないようなことを無理にさせてしまうと、やっぱり本人たちのストレスになってしまうとか問題行動を誘発するような原因になってしまうということがあります。

幼児期に最も重要な「遊び」

幼児教育の専門家の多くが、幼児期の子どもたちに実は一番大切なのは遊びだという風に言います。彼らはやっぱり遊びを通じて様々なことを学びます。例えば歌を歌うとか絵を書くというのは意思決定の連続だという風に言うわけです。

確かにそうで、どういう色を使おうか、どういう風にその声を出そうかみたいなことは意思決定の連続です。実は学力という風に言われている能力は、学問的には認知能力という言い方をするのですが、これは考える力なのです。ですから意思決定の繰り返しは、将来の認知能力に良い影響を及ぼします。

プロの技術を学ぶ

塗り絵などは楽しいじゃないですか、絶対楽しいと思って、塗り絵は多分学力にもつながると思って子どもにアンパンマンの塗り絵みたいな楽しそうなものを「塗ろうよ、塗ろ」って言っても塗らないんですよね、やりたがらないんです。

この点で幼稚園とか保育所によく行くのですが、幼稚園の先生とか保育士の先生は、本当にその子どもたちのやる気を引き出す言葉や方法をよく知っています。子どもはみんなそうなのですが、やれと言われたことは絶対やりません。やっぱそういうものです。だから「やれ」ではなく、自分で見つけてやろうかなと思ったことの中から始まる新しい発見や楽しさがあって、それに夢中になってやるのです。

先生たちは非常に上手にやっておられます。保育園の見学に行ったのですが、この先生たちは必ず疑問系なんです。「何々があるよ、どうする?」「やってみる?」って必ず意思決定を本人たちにさせる、考えさせる、そしていざという時はフォローしていくという、そういう上手い方法があります。

あの幼児教育の業界でよく「スキャフォルディング」という英語を使うのですが、これは橋渡しという意味なんです。今できないことを、ちょっと刺激を与えることでできるようにしていくということが幼児教育の要だという風に言われています。なので幼稚園の先生たちは教育を受けておられるのでよくそこをご存知だと思うのです。

ですから、ご両親によくお勧めしているのは、幼稚園の先生がどんな風にお声をかけになるかとか、保育園の先生がどんな風に子どもを動かしているかとか、ぜひ観察されるといいということです。技術は彼ら彼女らがお持ちだと思います。子どものちょっと押すだけでいいということです。

【研究結果4】祖父母の驚くべき効果

時間投資が十分できない場合の解決策として、まず提案したいのは祖父母に手伝ってもらうということです。実は祖父母が子どもに与える効果についての研究も進んできています。

3世代データが明かした真実

これはなかなか大変な研究で、なんでかって言うと3世代分データを取ってからなきゃいけないからです。3世代ってなかなか長いから、100年ぐらいデータを取らないとこういう疑問に答えを出すことができなかったのです。

しかし最近、フィンランドだったりとかいろんな国で3世代データが取れてまとまってきたというのが出てきました。どうやらやはり祖父母と一緒に関わることで、子どもたちの認知能力だったりとか発達が良くなるんじゃないかという研究が出てきています。

祖父母がもたらす具体的効果

認知能力、つまり考える力が良くなり、例えば言語発達とかそういうものも含まれて、言葉の発達が良くなるということです。やっぱりおじいちゃんおばあちゃんの言葉を学ぶわけです。祖父母と一緒に過ごしながら学ぶのです。

私たちだと「やばくない?」とか「すごくない?」って言っちゃう言葉を、おじいちゃんおばあちゃんはもう少しきちんとした日本語で説明してくれるというようなことがあった場合、これは子どもさんにとって見れば明らかにプラスになるということです。

血縁関係は必須ではない

これは血が繋がっている必要があるのかどうかは結構重要な点なのですが、必ずしも血が繋がっていないとダメだとは言えないのではないでしょうか。近くに住んでいない場合や、良心的なベビーシッターさんがおばあちゃん世代だったとしても、それでもいいということです。

祖父母が果たす役割の本質

これは結局何をしているのかって言うと、親が時間投資を十分にできないようなケースに、その時間投資を肩代わりしてもらっているということなのです。祖父母は一番頼りやすい人たちであるし、ハグしてあげるといった愛情表現とか愛着は子どもたちにはとても大切なことなので、そういうことを存分にやれるという祖父母の存在は非常に重要です。

【研究結果5】第一子vs第二子の真実

兄弟姉妹について、保護者の方に非常によく聞かれるのが、第一子と第二子の問題です。「どうしてこっちはダメなんでしょうか?」とか、あるいは第一子が男子で第二子が女子の時に「下の子はなんとかなってるような気がする」みたいな、そういう質問とか疑問を結構よくぶつけられます。

世界共通の現象

よく言われているのは、スポーツ選手アスリートだったら長男よりも次男の方が結果出せるということです。スポーツ選手の周りでは、長男が天才の場合、技術はこっちが長けているのに、プレッシャーで潰れるパターン、長男が潰れちゃうパターンが多かったりします。

第二子の方が有利だと思われがちで、上の子のことを見て早めに色々学べているから第二子の方が出来が良くなりそうですが、実際はどうなのでしょうか。

これはスポーツはまだ十分に研究が進んでいないのですが、学力とか学歴とか収入とかに関してだけを見てみると、第一子の方が第二子よりも出来がいいという結果になっています。めちゃくちゃ意外なのですが、これは日本だけではなくてアメリカとかデンマークとか、ありとあらゆる国でそういう結果になっています。

データを見ていただいて分かる通り、横軸が生まれ順、縦軸が教育年数の低下幅ということです。例えば第一子と第二子だとどれぐらいその教育年数が下がりますかということを表しているわけで、分かる通り1から2、2から3、3から4になるにかけて、ずっと学歴がこう下がっていっているわけです。

第一子が有利な理由

普通だったらこう兄を見て何か色々学ぶことがあるから学べそうな気がするし、実際にそういうことも分かっていて、弟妹は兄姉の選択を非常に強く受けているという研究はあります。例えば学校を選ぶ時に、お兄ちゃんお姉ちゃんと同じ学校に行きましたみたいな話って聞いたことがないと思うのですが、そういうことは実際に起こっているということは分かっています。

何らかの形で兄姉の影響を受けてはいるのですが、どうしてもやっぱり結果として第一子の方が学歴や収入が高くなっているという結果があります。

この第一子と第二子の差がどうしてつくのかということは、ほとんどが親の行動で決まっているじゃないかという仮説が多いです。いくつか仮説はあるのですが、一つ目の仮説で言うと、先ほど言った時間投資です。その時間投資の度合いが第一子の方が多くなっているということです。

当然にそうなります。特にやっぱり第一子ですと初めての子どもなので、もう何が正しくて何が正しくないのかわからないということで、やってみた結果、非常に子どもに対して時間を使っています。第二子になるとだんだん学んでくるので手抜きが生じてくるわけです。「これはいらない、これは第一子の時にはやったけど必要なかった」みたいな感じで、こう手抜きが生じてしまうわけです。

その結果、第一子に比べると第二子の方がその時間投資が少なくなっているということがあります。もう一つは、親は子どもに対して平等でありたいという気持ちを常に持っているわけです。ですから2人の子どもがいた時に、その2人の子どもに平等に時間を過ごそうという風に考えます。

なんですけれど、人生トータルで見てみると第一子は第二子より早く生まれてきているわけだから、第二子は嫌が応にも親からかけられている時間が少ないということになるわけなんです。

その結果、実はしっかりとした教育を受けている第一子の方が将来収入が高いとか学歴が高いとかということになります。「下の子を見て学んでいるから第二子の方が結果的に良いんじゃないかな」と思いがちですが、そうじゃないのです。

実はやっぱり親は第二子に甘いということがあります。これ以外にも例えば、長子というのは家の中で自然とリーダーシップを発揮しなきゃいけないような機会も多いわけです。お兄ちゃんが下の兄弟の面倒を見て、彼らに言うことを聞かせて親を助ける、そういうことをしています。

社長とかそういう人、政治家になってるとかですね、そういう人は圧倒的に長子が多いという風にも言われています。クラスで学級委員とかやるといいという話がありますが、それを家でできているということです。

そういうような様々なことが積み重なって、どうやら第一子の方が結果的に第二子よりも出来がいいんじゃないかということです。これが面白いことに、さっきも言ったように日本だけで生じているわけではなくて世界中で生じていて、その世界中の結果が驚くほど同じということになっています。

第二子の才能を伸ばす方法

その意味ではやっぱり親の教育投資行動、子どもが2人なり3人なりいる場合の親の教育投資行動は実は非常に重要だと思います。これは第二子の人にどうしようっていう話ではなくて、やっぱり第一子と第二子の間でその投資に差がつかないように家庭の中で配慮してもらえるとすごくいいそうです。親がわかってればできることもたくさんあって、改めてこの子にも時間をかける、時間をかけてあげるということが大切です。

時間が限られた中での効率的な関わり方

研究結果を踏まえ、限られた時間の中でできる具体的な方法について考えてみましょう。

出張に行かないといけない、今日は家帰ってから2時間ぐらいしか子どもと接してない、これで子どもに何してあげられるんだろう、帰ったら寝てましたみたいな、そういうこともあるかもしれません。そういう時はどうしたら効率的に関われるのでしょうか。

困ったらハグする、ハグですね。やっぱり他の人に甘えるという他ないんです。祖父母の手を借りるということです。物理的な接触による愛情表現は短時間でも効果的であり、愛着形成に重要な役割を果たします。

完璧を求めない子育てが大切で、親だけで全てを担う必要はありません。周囲のサポートを積極的に活用し、時間投資の代替手段として有効に使うことです。

時間の長さより質を重視することも重要です。ダラダラと一緒にいるより集中した時間を作り、子どもの話をしっかり聞く、一緒に何かに取り組む体験を大切にすることです。

そして幼稚園・保育園の先生から学習することです。子どもの意欲を引き出すプロの技術、疑問形での声かけ方法、強制ではなく選択させる技術を観察して学ぶことができます。

現代日本の働き方への示唆

研究結果は働く親を勇気づける一方で、構造的な問題も浮き彫りにしています。

非常に長時間労働が日本の会社の働き方の特徴でありますから、女性でもバリバリの人は夜8時とか9時まで全然働いています。そうすると子どもと過ごす時間が短くなるので、将来世代への時間投資がその分機会として奪われているということになるわけです。

なので、やっぱり子どもを支えるという観点で言えば、日本の企業はやっぱ働き方を大いに見直していくべきところはあるんじゃないかなと思います。子育て世代への配慮として将来世代への時間投資の観点から改革が必要であり、企業側の意識改革が求められ、社会全体での子育て支援体制の構築が重要です。

個人レベルでも家事の効率化で子どもとの時間を確保したり、質の高い時間の創出、夫婦間での役割分担の最適化といった工夫ができます。


個別最適化を超えた根本的課題

ここまで教育経済学の最新研究から、時間投資、習い事の選択、兄弟への配慮など、様々な知見をお伝えしてきました。これらはいずれも科学的根拠に基づく貴重な情報であり、多くの親にとって実践的な価値があることは間違いありません。

しかし、これらすべての研究結果を踏まえて実践したとしても、なぜか多くの親が感じ続けるのは「本当にこれで子どもの将来は大丈夫なのか?」という根深い不安です。

時間投資を最適化し、先取り学習を避けて年齢相応の遊びを重視し、祖父母の協力も得て、第二子にも配慮した教育を行う。それでもなお残る不安の正体は何でしょうか?

それは、これらすべての取り組みが「従来の教育ルートを前提とした最適化」にとどまっているからかもしれません。中学受験、高校受験、大学受験というレールの上で、いかに効率よく走るかを研究しているに過ぎないのです。

しかし時代は急速に変化しています。同じ投資額でより確実で大きなリターンを得る、根本的に異なるアプローチがあるとしたら、どうでしょうか?

個別の教育技術を最適化することも確かに重要です。しかしそれ以上に重要なのは、「どのゴールに向かって、どんな戦略で投資するか」という根本的な視点ではないでしょうか。

従来の教育投資の効率化ではなく、教育投資戦略そのもののパラダイムシフトについて考えてみませんか?

科学的根拠を重視されるご両親にこそ知っていただきたい、投資額1,000万円でROI25-30倍を実現する戦略的教育ルートについて以下の記事で詳しく解説しています。

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